里芋パスタとは?

里芋パスタを腹部に貼ったところ
 里芋が練りこまれたパスタ、ではありません。  

 里芋パスタは昔から“いも薬”として打ち身、捻挫などの貼り薬として汚血(おけつ)の吸出しに使われてきました。 

 里芋パスタは生姜湿布(しょうがしっぷ)によって患部に集められた汚血などを皮膚を通して吸い出すと言われています。ではなぜこのようなことが起きるのでしょうか?これは推論ですが浸透圧の原理を利用したものではないかと思われます。料理をする方ならご存知だと思いますがキュウリを塩もみするとしばらくするとキュウリから水分が出てきます。これはキュウリの表面に付けた塩の方が濃度が濃いのでキュウリの水分が内側から出てくるわけです。

 思うに里芋パスタを腹部、胸部に貼り付けると私たちの体液よりもその濃度が濃いので私たちの体から里芋パスタの方へ水分が抜けていくと考えられます。

 足がむくんだ時のように細胞内に水分が貯留しているケースよりも、腹水のような内臓組織外に液体として水分が貯留しているケースの方が確実に水分を取るようです。ですので足のむくみ、腕のむくみに里芋パスタをしてその軽減を図るのは難しいと考えています。

なお当院では現在、里芋パスタは腹水、胸水を取る場合と乳がんで腫瘍を表に吐き出して治す場合にのみ使っています。それ以外の場合は基本的に里芋パスタをしていません。

 里芋パスタにより腫瘍らしきものが皮膚から出てきたこともあります。大腸がんで腹膜播種(ふくまくはしゅ)になっている患者さんが1日3~4回の生姜湿布+里芋パスタの手当てを1ヶ月したところ、お臍の下4センチほどのところから始めは皮膚が黒かったのが大きなおできとなりついには皮膚を破って黒い塊がでてきました。病院で検査して腫瘍だと確認したわけではありませんが、腹膜播種という状態を考えればこの皮膚から湧き出てきた黒いものは腫瘍の一部ではないかと考えることは自然なことに思えます。このように確かに里芋パスタには体内の汚物を吸い出す力がありますし、また人間の身体には汚物を外に吐き出す解毒の力が備わっていると思われます。

里芋パスタで用意するもの

<里芋>
・患部の広さに合わせて1~6個。
・自然療法全般に言えることですが材料はできるだけ有機農法などで作られた良質のものがよい。しかし有機の里芋はほとんど手に入りませんし、里芋パスタは外用(がいよう)といって肌に付けるものであり口から摂取する内用とは違うのであまり神経質になる必要はないと思います。
・芋はできれば大きめのものを選びましょう。小粒な芋を選ぶと一個一個の皮剥き作業がたいへんです。
<生姜>
・里芋の10%。
・古根生姜。新生姜は使わない。
<小麦粉>
・当院では地粉などを使っています。中力粉。これが無ければ強力粉と薄力粉を半分ずつ混ぜて使います。
・量は里芋と同量~2倍 (里芋の水分量により変わります)
<フランネルの生地>
・ネルシャツやパジャマの生地である綿のフランネル生地。両面起毛タイプがよい。片面起毛タイプは少し薄くて里芋パスタが染み出てくる恐れがある。ガーゼ、さらしの生地は里芋パスタが染み出てくるので不可。
・腹水を取る時には30cm×40cmくらいの面積を使うことも。
・一度使ったものを洗って再利用可能。
<生地用ハサミ>
・フランネルの生地を切る。
<防水フィルム>
・肌に里芋パスタを留めるために使う。ドラッグストアなどで市販されている。50mm幅で2mとか。防水フィルムでなくても良い。
・あまり粘着力が強すぎるものはパスタは固定されるのではみ出て汚れる心配は無いがそのかわり剥がす際に肌を強く痛める。逆に粘着力の弱いものは肌には優しいがパスタを固定しきれず衣服、寝具を汚す恐れがある。
<ハサミ>
・防水フィルムなどのテープ類を切る。
<おろし器>
・陶器製のものが細かくクリーミーに里芋をすりおろせるので良い。おろし金は掻き削るものであり陶器製のものよりは里芋のすりおろし具合が粗い。不可ではないが陶器製のものをお勧めします。
<ボウル>
・直径20cm以上あった方が便利。
<手袋>
・商品名「ムッキー」というごぼうの皮をこそげ落とすときなどに使う手袋。塩ビ製?で手のひら部分に多くの細かい硬質プラスチックの粒粒が付着していて里芋の皮を粗く剥くのに最適。
<お盆>
・フランネル生地の上に伸ばした里芋パスタを患者の枕元などに置いておくためにつかう。大きめが良い。
<菜箸2膳>
<ゴムベラ>

里芋パスタのやりかた

 がんの手当てをするには里芋パスタをする前に生姜湿布を充分に行います。 里芋パスタを貼り替えるときもそのつど生姜湿布を行います。 そのとき、前回使った生姜湿布の鍋の残り湯を温め直すことはいけません。なぜなら数時間前におろした生姜の成分は時間の経過とともに空気中に揮発していくので、その鍋の生姜汁にはもう有効成分が残っていないと考えるからです。面倒ではありますがもう一度始めから生姜をすりおろして生姜湿布をしてください。

 生姜湿布と里芋パスタを併用する場合には生姜湿布をする前にあらかじめ里芋パスタを完成させておきます。 そうでないと生姜湿布で温めた肌にすぐに里芋パスタを乗せることができないからです。

 里芋パスタの有効時間は4時間です。長時間貼り続ければ続けるほどよく取れるということではありません。4時間程度で張り替えた方がよく水分を取ります。
 腹水、胸水が溜まっている方、痛みが激しい方などは1日数回を目安に様子を見ながら加減しましょう。

 里芋パスターでかぶれる人は、貼る前に患部にごま油を塗るとかぶれにくくなります。しかし癌の吸出し力は当然衰えます。 癌とかぶれとどちらを優先するかを決めて対処してください。

里芋パスタの具体的なやりかた

①患部の大きさに合わせてフランネルの生地を切る

患部の大きさに合わせフランネルの生地を切る
・患者に横になってもらい患部の肌を出してもらう。その肌の上にフランネルの生地を広げて置き、患部の大きさに合わせて切る。

・腹水であればみぞおちの直下3,4cmくらいにフランネル生地の上辺を合わせる。この時、油性マジックで肌の上に線を引いて印をつける。あとで里芋パスタを塗ったネル生地を肌に乗せる際にこの上辺のマジックラインに合わせるので重要な線である。


・次にフランネル生地の横幅を決める。左右の腰骨(ここを”上前腸骨棘じょうぜんちょうこつきょく”という)の幅がよい。(フランネルの生地を大きくすればするほど表面積が大きくなって腹水も早く取れるようになるが里芋を摩り下ろす量も増え作業量が増大してたいへんである)

・幅を決めたらマジックでネル生地に線を引き、その線に沿って生地用ハサミでこれを切る。

②里芋の皮を剥き、摩り下ろす

里芋をすりおろす
 里芋を水で洗い皮を剥きます。私はムッキーという名前の手のひら部分にたくさんの小突起のついたゴム手袋を使っています。ピーラーで剥くよりも歩留まりがいい感じです。多少皮が残っていても良いです。

 そして陶器製のおろし金で里芋を摩り下ろしていきます。

③生姜を加える

すりおろした里芋にすりおろした生姜を加える
 生姜は皮を剥かず摩り下ろします。量は②でできた摩り下ろした里芋の10%くらいです。

④小麦粉を②③の摩り下ろした里芋と生姜に加える

すりおろした里芋、生姜に小麦粉を加える
 ボウルに摩り下ろした里芋、生姜そして小麦粉を加えます。里芋と生姜を足したのと同じくらいの小麦粉を目分量でまずは入れます。

 小麦粉は中力粉を。中力粉が無ければ薄力粉と強力粉を半分量ずつ混ぜて中力にして使います。
 水、湯などは加えません。

 里芋、生姜、小麦粉をよくかき混ぜます。菜箸、ゴムベラ、あるいは素手でかき混ぜます。

 固さ:里芋パスターは体からの水分などを吸い取って 柔らかくなるので固めに作ります。箸でこねるのが大変なくらいが良いでしょう。

 里芋と生姜を足したのと同量くらい小麦粉を入れた最初の段階はほとんどの場合、まだ生地が緩いです。
 箸でやっとこねることができるくらいの固さ=耳たぶより少し柔らかいくらいになるまで、加減を見ながら小麦粉を足しながら練っていきます。
 

⑤フランネルの生地に④でできた里芋パスタを塗り拡げる

 ④の里芋パスターをボウルからゴムベラなどですくい取り、①で作ったフランネルの布の上に乗せて塗り拡げていきます。

 厚さ5mmくらいにして塗り広げていきます。この時、ネル布の縁から1.5cmくらいまで均一に塗り広げます。
 あまり縁に近くまで塗り広げるとあとで里芋パスタが水分を吸って膨らみ、はみ出て始末に困ることになります。

⑥⑤でできた里芋パスタを塗った生地をお腹の上に乗せる

里芋パスタ生地をお腹の患部上に乗せる
⑤でできた里芋パスタ付き生地を患部にそっと乗せます。この時、生地の隅をお腹に書いた角の部分に当てるとずれることなく適切な位置に生地を貼ることができます。下の写真でそれがわかります。左上のカギ形の角に生地をあてるのです。みぞおちあたりにある線はネル生地上端を当てて下ろすラインです。

⑦四つの辺をテープで止めて肌に固定する


 お腹の上に乗せた里芋パスタ付きの生地の周囲をテープで止めて肌に固定します。(昔の人はテープなどなかったのでさらし、腹帯といったもので固定していたことでしょう) この固定することで立ち動くといった日常動作ができます。里芋パスタは貼ったらそのまま寝ていないといけない、といったお手当てではありません。

 起き上がって日常生活をしていると腹水を吸って重くなった里芋パスタの自重で全体が下に下がることで下辺のテープが解けて「決壊」し、里芋パスタで下半身や服がたいそう汚れてしまう、といった事件が起こることがあります。

 ですので下辺と左右の側にはさらに外側にテープを貼ることで「防波堤」の幅を広げて決壊という事態を避けることを当院ではしています。

里芋パスタをする際の注意点

 腹水、胸水というものは一日でいっぺんに溜まるものではなく徐々に溜まっていくものです。腹膜や胸膜に存在するがん細胞が体液を集めるため腹水、胸水が徐々に溜まります。よってこれらの腫瘍を治さない限り腹水、胸水は溜まり続けます。

 このように腹水、胸水は増加の程度にこそ差はあれ、徐々に溜まっていくものです。なので一日に溜まる量よりも多くの量の水分を体表面から里芋パスタが吸ってくれれば腹水、胸水は徐々に減っていきます。
 なかなか減らないという場合は「里芋パスタを行う回数が少ないため溜まる量よりも取る量が少なくて、全体として減っていかない」というケースがほとんどです。このような場合にはただ回数を増やしていただくことしかありません。

里芋パスタでも水が取れない場合

 里芋パスタを継続的にしていけば徐々にではありますが確実に腹水はふつうは減っていきます。しかしこれまで里芋パスタをしてもなかなか腹水が取れていかないケースが2例ありました。以下のケースです。

腹腔に腹水だけでなく空気も溜まっている場合

 この方は往診に行った方でした。すでに起き上がれない状態で腹部が膨満していました。お腹を触って手のひらで肌を2,3センチ押すと「底が触れる」のです。お腹の中にあと一枚、内臓を包んでいるような確かに手応えのある膜があり、私の手はそれに触れているような感じでした。その膜に触れるまでのところにあったのはたぶん空気でしょう。

 この方はもう仰向け状態でしかいられなかったので、そのお腹の上に里芋パスタをしたのですが、パスタを貼った皮膚の下にはたぶん空気があったためでしょう、腹水はまったく取れませんでした。里芋パスタは浸透圧の原理で水分を体表から抜いていくため途中に空気があったのでまったく水分の移動が現実化しなくて腹水が減らなかったと思われます。

粘性の高い腹水の場合

 卵巣がんの方でした。腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)という病名で、ゼラチンのような物質が腹水としてお腹に大量に溜まってしまいました。この方の場合も里芋パスタによってもまったく腹水は減りませんでした。

 これはたぶん腹腔内にあったものが濃度の高いゼラチン様の物質であったため、体表に貼った里芋パスタの濃度よりも濃かったため浸透圧の原理が働かず体外への水分の移動が行われなかったためと考えられます。

 (余談ですがこの方の場合はのちに腹部の外科手術でごっそりとゼラチンの塊を取ったことで病気が完治しています)

里芋パスタのやりかたの動画

 

里芋パスタによる胸水・腹水の治療


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